「自分がまずく行ったことをひとのせいにするのは学ばぬ者のすること。(エピクテトス)」(『古代ローマの言葉』,ブノワ・デゾンブル編,中居久夫・松田浩則訳,紀伊國屋書店」)
○自分を人間的に成長(成熟)・向上させ続けるためには,経験から学ぶということ,特に,失敗から学ぶということが欠かせません。しかし,失敗から学ぶことができるのは,その失敗を素直に認め,その責任を潔く引き受けることのできる人間だけです。自分の失敗を否認し,その責任を他者や社会に押し付けようとする人間は,失敗から何も学べず,したがって,人間的に成長・向上することができません。自分を人間的に成長・向上させ続けることによって,自分の可能性を十分に花開かせ,実を結ばせるとともに,多少なりとの他者や社会の役に立ち,思い残すことのない充実した有益な人生を送りたいと望むのであれば,私たちは,自分の失敗を否認することなく,その責任を潔く引き受けられるようになる必要があるのではないでしょうか。なお,失敗から学ぶことができるのは,その失敗が自分の自由意志に基づいたなされた行動の結果である場合に限られます。他者から強制された行動によって失敗したところで,それを自分の失敗と受け止めることはできないでしょうし,集団行動に基づく失敗も,たとえその集団に自分が所属していたとしても,必ずしも自分の自由意志に基づく行動であるとは限らず,また,責任の所在があいまいであるため,それを自分の失敗と受け止めることは難しく,十分な学びの機会にすることは困難です。(11)(12)(15)(20)関連