多数決の結果も含め，世間の評判や多数者の意見がいつでも正しいとは限りません。「聞いて極楽見て地獄」，「見ると聞くとは大違い」などとも言うように，世間の評判などを鵜呑（うの）みにし，自分の目で確かめたり，自分の頭で考えたり，判断したりすることを怠れば，取り返しのつかない失敗や過ちを犯してしまう危険性さえあります。なお，極端な（バランスや良識を欠いた）意見や否定的な意見は声高に表明されることが多く，声高に表明された意見に対しては人々の注目や関心が集まりがちです。特に，その意見表明者が大きな影響力を持つ有名人である場合には，一時的に多数の賛同者を得ることもあります（多数の人間を長期間にわたって騙（だま）し続けることはできないとよく言われますが，短期間であればそれも可能です。したがって，大きな影響力を持つ有名人が大きな声で扇動すれば，一時的にはほとんどの人間が間違った方向に導かれてしまうというようなことも，十分に起こり得ます。）。しかし，改めて言うまでもなく，ある意見に対する賛否を決める際に重要なことは，意見表明者の声の大きさや知名度や賛同者の多さなどではなく，その意見内容の正しさや健全さです。穏当な（バランスの取れた良識的な）意見や肯定的な意見は，普通の声音で表明されることが多く，場合によっては，あえて表明されないこともあるくらいです。判断や行動を誤り，後悔しないようにするためにも，くれぐれも意見表明者の声の大きさや知名度や意見賛同者の多さなどに惑わされたり，踊らされたりしないようにしたいものです。
