「今生まれる子どもたちは80年以上の寿命を期待でき,市場には食料品があふれていて,指をちょっと動かすだけで清浄な水が流れ,・・・痛みを伴う感染症も錠剤で治癒し,息子たちを戦場に送り出さずにすみ,娘たちが通りに出ても危険がなく,権力者を批判しても投獄されたり撃たれたりせず,世界の知識と文化がシャツのポケットに入ってしまうといったことを,わたしたちは当たり前だと思っている。」(『21世紀の啓蒙(上)』スティーブン・ピンカー,橘明美・坂田雪子訳,草思社)
○私たちが暮らしている社会は,人類史上最も豊かで安全で便利な社会と言えます。にもかかわらず,私たちは,このような社会で暮らせることを当たり前と思い,感謝するどころか,社会に対する不平不満ばかりを募らせてしまいがちです。人間の欲望には限りがありませんので,自分の欲望に自分の意志でブレーキを掛けない限り,どれだけ恵まれた暮らしを手に入れようとも,私たちの心が満ち足りるということはありません。常に満ち足りた気持ちで幸せな人生を送りたいと望むのであれば,私たちは,必要以上に欲張ることをやめ,自分の欲望にブレーキを掛けるかけられるようになる必要があるのではないでしょうか(人生に高い理想を掲げつつも。)。自分の欲望にブレーキを掛けられるようになるなら,私たちはきっと,たとえそれが必要最小限のものであったとしても,自分が持っているものだけで満足できるようになるでしょうし,このような豊かで安全で便利な社会で暮らせることの有り難さに心から感謝できるようになるはずです。(4)(6)(21)関連