私たちが，このような豊な社会で暮らすことができるのは，そのような社会で暮らすことを私たち人類が強く望み，欲し続けた結果であり，私たち人類が，生きていくのに最低限必要な物やお金だけでは満足せず，必要以上の物やお金まで手に入れようと欲張り続けた結果と言えます。しかし，社会が豊かになれば，それに伴って私たちの欲望も肥大化しますので，たとえどれだけ社会が豊かになったとしても，私たちの心が満ち足りるということはありません。いたちごっこです。むしろ，私たちは，社会が豊かになったことで互いに支え合ったり助け合ったりする必要性が低下したこともあり，自分の欲望の充足ばかりを追い求めるようになり，欲望の肥大化に歯止めが掛からなくなってしまった挙げ句，礼節を失うとともに，不平不満ばかりを募らせては自分は不幸であるなどと思い込むようになってしまっているのではないでしょうか。消極的で後ろ向きな印象を与えるかも知れませんが，私たちはそろそろ，これまでの価値観や考え方や生き方を見直し，たとえ社会の進歩・発展や生活水準の向上をある程度は犠牲にしてでも，自分の欲望にブレーキを掛け，必要以上に欲張り続けることをやめ（自分をできる限り無欲・小欲の状態に近づけ），礼節をわきまえるとともに，自分の人生に満足できるようになること（生きていくのに最低限必要な物やお金だけで満足できるようになること）をこそ目指すべきなのではないでしょうか。
