「貧しいよりも豊かな方がいいに決まっている。ただし,成り金根性に陥らずに,たとえ経済的に豊かになっても,金銭という魔物に精神の自由を奪われないことが必要なのである。」(『人類知抄 百家言』,中村雄二郎,朝日新聞社)
○私たちが暮らしている社会は,人類史上最も豊かな社会と言えますが,社会が豊かになったことで私たちの満足度や幸福度は本当に上がっているのでしょうか。私たちの満足度や幸福度が上がっていないとしたら,社会が豊かになることに,いったいどのような意味があるのでしょうか。社会がいくら豊かになったところで,それを当たり前と思い,感謝する気持ちを忘れてしまうなら,私たちの満足度や幸福度は上がりようがありません。むしろ,社会が豊かになればなるほど私たちの欲望も肥大化していくため,社会が豊かになるに連れて私たちの満足度や幸福度は下がってしまう危険性さえあります。私たちの満足度や幸福度を上げたいと本気で望むのであれば,私たちは自分の欲望に自分の意志でブレーキを掛けられるようになる必要があるのではないでしょうか。自分の欲望に自分の意志でブレーキを掛けられるようになるなら,私たちはきっと,このような豊かな社会で暮らせることを当たり前と思ったり,このような豊かな社会で暮らせることに対する感謝の気持ちを忘れてしまったりするようなことはなくなるはずです。私たちが自分の欲望に自分の意志でブレーキを掛けることによって,社会の経済的な発展にも自然にブレーキが掛かってしまうでしょうが,その分,社会は,経済的な豊かさではなく心の豊かさを追い求める進歩・発展していく可能性が高まるはずです。(4)(6)(21)関連