権力は,世の中の規律や秩序を保つ上において欠かせないものですが,権力者が,その権力を私物化し,私利私欲のために乱用すれば,規律や秩序はかえって乱れ,世の中は危険で争い事の絶えないものになってしまいます。したがって,権力を託す人間を選ぶ際には,権力は私利私欲と結び付きやすく,腐敗しやすいものであるということを十分に認識した上で,くれぐれも慎重に,権力を私物化する危険性の少ない人間を選ぶ必要があります。権力を手に入れたがる人間は,往々にして私利私欲に捕らわれた利己的な人間であることが多いので,権力を私物化する危険性の少ない人間を選ぶのは至難の業かも知れませんが,私利私欲に捕らわれた利己的な人間は,私利私欲に走りやすいだけではなく,他者をも自分と同じように私利私欲に捕らわれた利己的な人間と見なしやすいため,他者との間に友好的・協調的な関係を築くことが難しく,他者を力ずくで支配しようとしがちです。したがって,私たちは,安全で平和な世の中を築き,維持するためにも,また,権力者に力ずくで支配されることを避けるためにも,権力を私物化する危険性の少ない,多少なりとも利他的な傾向の認められる人間にこそ権力を託す必要があります。そして,そのためにも,私たち自身が,私利私欲に捕らわれないよにする必要があると思います。なぜなら,私利私欲に捕われた人間は,どうしても私利私欲に捕われた人間(自分や自分の支持者の私利私欲のために権力を乱用する危険性の高い人物)に権力を託そうとしがちだからです。