「言う者は知らず,知るものは言わず。余慶な不慥(ふたし)の事を喋々(ちょうちょう)するほど,見苦しきことなし。・・・何事も控え目にせよ。」(「愚見数則」(『学生諸君!』所収),夏目漱石,光文社)
○何事も,深く知れば知るほど分からないことも増えてくるため,深く知っている人ほど,その発言は慎重になり,控え目になるものです。他方,浅くしか知らない人は,生半可な知識を得て何でも分かったつもりになってしまうので,その知識を人前でひけらかしたり,何事にも余計な口を差し挟んだりしてしまいがちです。その結果,その見苦しさを嫌われたり,その無知さや知ったか振りを馬鹿にされたりすることも多くなります。また,何でも分かっていると慢心してしまえば,それ以上に知ろうとする意欲を失い,人間的な成長(成熟)・向上もそこでストップしてしまいます。どれだけ深く知ったところで,人間が知っていることなど高が知れているのですから,私たちは,自分が無知であることを常に自覚しているべきであると思いますし,自分を人間的に成長・向上させ続けることによって自分の可能性を十分に花開かせ,実を結ばせるためにも,決して慢心することなく,謙虚に学び続ける姿勢を失わないようにしたいものです。(12)関連