「馬鹿は百人寄っても馬鹿なり。味方が大勢なる故,己れの方が智慧ありと思うは,了見違いなり。・・・味方の多きは,時としてその馬鹿なるを証明しつつあることあり。」(「愚見数則」(『学生諸君!』所収),夏目漱石,光文社)
○声高に表明された意見には人々の注目や関心が集まりやすく,場合によっては,多数の賛同者を得ることもありますが,多数決の結果も含め,多数者の意見がいつでも正しいとは限りません。改めて言うまでもなく,ある意見に対する賛否を決める際に重要なことは,その意見の正しさや健全さであって,表明者の声の大きさや賛同者の多さではありません。否定的な意見や偏りのある意見が声高に表明されることが多いのに対し,肯定的な意見や良識的な意見は普通の声音で表明されることが多く,あえて表明されないことさえ多いものです。取り返しのつかない失敗や過ちを犯し,人生に大きな悔いを残さないようにするためにも,何事も自分の頭で考え,判断し,行動する習慣を身に付け,くれぐれも意見表明者の声の大きさや意見賛同者の多さに惑わされたり,踊らされたりしないようにしたいものです。(14)関連