「社会の中で活動するときには,問題が起こらないよう望んだり祈ったりしないこと。問題がないとき,私たちは傲慢になりやすい。」(『ブッダの〈今を生きる〉瞑想』,ティク・ナット・ハン,島田啓介訳,野草社)
○豊かで安全で便利な社会で生活していると,ついつい人生は何でも自分の思い通りになると勘違いし,期待してしまいがちですが,人生が自分の思い通りになるなどということは絶対にあり得ません。そのような甘い期待を抱いている人間は,結局は,自分の思い通りにならない人生に不平不満ばかりを募らせる結果になってしまいますし,人生が自分の思い通りにならないことの原因や責任を他者や運命に求めては,他者を恨み,他者を責め立て,運命を呪い,不運を嘆き悲しむような,被害感ばかりの強い他罰的(他責的)な人間になってしまいます。社会がどれだけ豊かで安全で便利になろうとも,人生はままならず,ままならないのが人生なのですから,人生は何でも自分の思い通りになるなどという甘い期待は抱かないようにしたいものです。人生はままならないものであるという事実をあるがままに受け入れることさえできるなら,人生に不平不満を募らせたり,他者を恨んだり,運命を呪ったりすることも少なくなるでしょうし,むしろ,豊かで安全で便利な社会で生活できることの有り難さにも改めて気づくことができ,感謝する気持ちを忘れずに,心穏やかに人生を送れるようになるのではないでしょうか。(2021年7月6日)(1)(4)(6)関連