「幸福はなにげない日常の出来事に導かれて自分の体と心を立て直すといった,そんな動きの積み重ねのなかに育(はぐく)まれる。」(『幸福とは何か』,長谷川宏,中央公論新社)
○私たちは,人が羨むような社会的成功を追い求めがちですが,真の幸せは,普通の平凡な人生に幸せを感じられるようになることにこそあるのではないでしょうか。社会的成功のような派手で目立つ「大きな幸せ」は,以外に底が浅く,すぐに色褪(いろあ)せてしまいがちであるのに対し,人生の至る所に転がっている地味で目立たない(それゆえに多くの人に見過ごされがちな)「小さな幸せ」は,日常生活に深く根差していることもあり,意外に底が深く,色褪せるということがありません。自分が今ここでこうして生きていられることの有り難さに常に深く思いを致し,心から感謝する習慣を身につけるなどして幸せに対する感度を高めることができるなら,私たちは,人生に隠されている(埋もれている)無限とも言える「小さな幸せ」に気づけるようになり,やがては生きていることそれ自体に幸せを感じられるようになるのではないでしょうか。「大きな幸せ」に執着する余り,いま自分の目の前にある「小さな幸せ」に気づけなくなってしまうようなことがないよう,くれぐれも留意したいものです。(2021年7月5日)(1)(4)(6)(7)(8)関連