「確かに罪深く,偽りに満ち,ことにわれわれに悪をなす人に対して,優しく接することは困難であるが,しかしそんな人に対してすら,否,まさにそんな人に対してこそ,その人のためにも自分のためにも優しく接することが必要なのである。」(『文読む月日(上)』,トルストイ,北御門二郎訳,筑摩書房)
◯完全な善人がいないように,完全な悪人など,どこにもいません。どんな善人の心の中にも悪人が住んでいるように,どんな悪人の中にも善人が住んでいます。その善人が私たちの目の前に立ち現れてくるようにすることが,本人にとっても社会にとっても望ましいことであるのなら,私たちは悪人の心の中に住む善人にこそ積極的に目を向け,呼び覚まそうとすべきであり,相手を簡単に悪人と決め付けて切り捨ててしまうのではなく,相手の成長・更生可能性を信じて粘り強く,「罪を憎んで人を憎まず」という心構えで向き合い続ける必要があるのではないでしょうか。私たちはみんな同じ人間なのであり,また,自分と他者は一体なのであり,互いに敵視して足を引っ張り合いながら生きていくのではなく,互いに仲良く助け合いながら生きていきたいものです。(2020年5月11日)