「今,私たちは地球環境に即した節度をもつという意味でストイックな,持続可能な生活スタイルを求められています。若い世代を中心に欲望に節度をあたえ,不必要な贅沢(ぜいたく)がなくても幸せに生きる,簡素でも豊かなライフスタイルが提案されています。そこには地球環境によって育まれる命の大切さをみつめる,平和の視点もあります。浪費的な生活から解放されて,地球環境に見合うようダウンサイジングされた節度ある,平和な生活に真の豊かさを味わう,新たなストイックな生き方を模索してはどうでしょうか。」(『もういちど読む山川倫理 PLUS 人生の風景編』,小寺聡編,山川出版社)
○私たちが暮らしている社会は,人類史上最も豊かな社会と言えます。このような豊かな社会で暮らせることは,本当に有り難いことであり,心から感謝すべきことであると思います。このような豊かな社会を築いてくれた先人たちに対する感謝の気持ちは,決して忘れてはいけないと思います。しかし,確かに社会は豊かになりましたが,そのことに伴って私たちの幸福度は上がっていると言えるでしょうか。社会の豊かさと私たちの幸福度が比例していないとしたら(あるいは,反比例しているとしたら),これ以上社会が豊かになることに,いったいどのような意味があるのでしょうか。私たちはそろそろ,経済的・物質的な豊かさではなく,心の豊かさを追い求める方向に大きく舵(かじ)を切る必要があるのではないでしょうか。経済的・物質的な豊かさをある程度は犠牲にしてでも,私たちの幸福度を上げることにこそ最大限の関心を払い,最大限の力を注ぐべきなのではないでしょうか。節度あるほどほどの豊かさを享受しつつ誰もが幸せな人生を送れるような社会の実現を,是非とも目指したいものです。(4)(6)(14)(21)関連