「飢えないこと,渇かないこと,凍えないこと,これらが身体の〈自然〉な叫びである。(エピクロス)」,「このような飢えや渇きなどの自然な欲求は,節度もあり,満たすことも容易です。一方,贅沢(ぜいたく)を渇望する欲求はとどまるところを知らず,満足させるために金銭と労力がかかり,人間を逆に疲弊させます。」(『もういちど読む山川倫理 PLUS 人生の風景編』,小寺聡編,山川出版社)
○人間が生きていく(衣食住を最低限確保する)のに必要な物やお金など,本当は高が知れているのではないでしょうか。なぜ私たちは,生きていくのに必要な物やお金だけでは満足せず,必要以上の物やお金まで手に入れようとするのでしょうか。なぜ私たちは,必要以上の物やお金を手に入れることに人生の大半を費やし,自分の一生を台無しにしてしまうのでしょうか。贅沢(ぜいたく)を言えば切りがありません。逆に,贅沢さえ言わなければ,自分の人生に満足することや,自分の人生に満足しつつ真に人間らしく実り多い,自分にとってのみならず他者や社会にとっても有益な充実した人生を送ることは,格段に容易になります。実り多い幸せな人生を送ることを望むのであれば,私たちは,贅沢な暮らしを手に入れることにではなく,質素な(必要最低限の)暮らしで満足できるようになることにこそ,関心を払い,力を注ぐべきなのではないでしょうか。経済的・物質的な豊かさではなく,心の豊かさを手に入れることにこそ,限りある大切な時間やエネルギーを使うべきなのではないでしょうか。(1)(4)(6)(10)(20)(21)関連