「このような(農耕の開始をきっかけとする)生活の向上は社会関係のうえにも大きな変化をもたらした。生産が高まると富をたくわえるものがあらわれ,集落のなかや集落相互のあいだに貧富の差がうまれ,身分の別がおこった。」(『新もういちど読む 山川日本史』,五味文彦・鳥海靖編,山川出版社)
○私たちが暮らしている社会は,物質的には人類史上最も豊かな社会と言えますが,物質的に豊かになったことで,私たちの幸福度は本当に上がっているのでしょうか。むしろ,下がっているのではないでしょうか。社会が豊かになることと私たちの幸福度が比例していないとしたら,現在の延長線上にさらに社会が豊かになっていくことに,いったいどのような意味があるのでしょうか。もちろん,衣食住が確保されていないような状況は何としてでも改善・解消されるべきであると思いますが(国の福祉政策などによって),衣食住が最低限確保されているなら,私たちは,私たちの幸福度を高めることにこそ関心を払い,力を注ぐべきなのではないでしょうか。私たちはそろそろ,物質的な豊かさではなく,心の豊かさを追い求める方向に大きく舵(かじ)を切るべきなのではないでしょうか。そのためにも,まずは,幸せとは何かということを正しく見極めた上で(この作業を疎(おろそ)かにすれば,すべての努力が徒労に終わってしまう危険性があります。),どのようにすれば誰もが幸せな人生を送れるようになるのかということを改めて真剣に考えてみる必要があると思います。(4)(6)(21)関連