「発展と引き換えに捨てたものは大きい」(『リバー』,奥田英朗,集英社)
○何事にも一長一短がありますので,何かを手に入れるということは何かを失うということに他なりません。何かを手に入れるためには,必ず何かを失わなければなりません。私たちが暮らしている社会は,物質的には人類史上最も豊かな社会と言えますが,このような社会(での暮らし)を手に入れるために,私たちはこれまでにどれだけ多くのものを失い,犠牲にしてきたのでしょうか。また,このような社会を維持し,あるいは,さらに進歩・発展させるために,私たちはこれからどれだけ多くのものを失い,犠牲にしようとしているのでしょうか。社会が進歩・発展したことによって,私たちの幸福度は本当に上がっているのでしょうか。社会が今後さらに進歩・発展することによって,私たちの幸福度は本当に上がっていくのでしょうか。社会の進歩・発展と私たちの幸福度が比例していないとしたら,現在の延長線上に社会が進歩・発展し続けることに,いったいどのような意味があるのでしょか。このような豊かな社会で暮らせることは,心から感謝すべき有り難いことですが,何を手に入れるために何を失おうとしているのかということについて,私たちはもう少し自覚的である必要があるのではないでしょうか。そして,私たちはそろそろ,物質的な豊かさではなく,心の豊かさを追い求める方向に(私たちの幸福度を上げる方向に)舵(かじ)を切る必要があるのではないでしょうか。(4)(6)(9)(11)(21)関連