「歳を重ねるごとに思うのは，人は助け合って生きているということである。」（『リバー』，奥田英朗，集英社）
○現在の日本のような豊かで安全で便利な社会で暮らしていると，ついつい忘れてしまいがちですが，人間は独りでは生きていられません。人間は，他者と支え合い，助け合ってこそ生きていられるのです。例えば，生きていくのに欠かすことのできない衣・食・住のどれ一つを取っても，完全に自給自足できている人など，少なくとも現在の日本にはいないはずです。この事実を正しく認識するなら，他者を競争相手（敵）と見なして足を引っ張り合ったり，パイを奪い合ったりするような生き方ではなく，他者を協力相手（味方・仲間）と見なして仲良く助け合ったり，生きる喜びや幸せを分かち合ったりするような生き方こそが，人間にとって自然で真っ当な生き方であるということが分かるはずです。私たちは，年齢を重ねるにつれて自然に，この事実を正しく認識できるようになりますが，できることなら人生のできる限り早い時期に，この事実を正しく認識できるようになりたいものです。なお，人間が自立するということは，他者から支えられ，助けられるだけの存在（他者に依存するだけの存在）ではなく，自分も他者を支え，助けられる存在（他者と相互に依存し合える存在）になるということです。誰にも頼らずに自分独りの力だけで生きていけるようになるということではありませんので，くれぐれも勘違いしないようにしたいものです。（11）関連
