「われわれはこんなことを言う。『彼は無為に一生をすごした。彼は今日は何もしなかった。』ーーー何を言うのか? あなたは生きたではないか? 生きるということはあなたの根本的な仕事であるばかりでなく,あなたの仕事のなかで最も輝かしい仕事である(モンテーニュ)」,「人生を自分なりに,自分の力で生きることほど,誇りに満ちた仕事はありません。ましてや周りの人を幸せにする手助けができれば,それはより喜びに満ちたものになるでしょう。」,「私たちが人として生きるという仕事を,日々,誠実に,真面目(まじめ)にこなすところに,幸福の虹がそっと足を下ろすのです。」(『もういちど読む山川倫理 PLUS 人生の風景編』,小寺聡編,山川出版社)
○生きているということは,よくよく考えてみれば分かるように,一つの奇跡です。心から感謝すべき有り難いことです。私たちは,ただ生きているというだけで十分に価値があるのではないでしょうか。また,ただ生きているというだけで,すでに十分に幸せなのではないでしょうか。他者と競い合って社会的(世俗的)な成功を収め,財産や地位や権力や名声などを手に入れなければ生きている価値がない,幸せになれないなどといったデマを鵜呑(うの)みにしたり,そのようなデマに踊らされたりすることなく,生きていることそれ自体に掛け替えのない価値を見いだしたり,幸せを感じたりできるようになりたいものです。生きていることそれ自体に掛け替えのない価値を見いだしたり,幸せを感じたりできるようになるなら,私たちはきっと,社会的な成功など収めなくても,ただ生きているというだけで,常に誇りを持って幸せな人生を送り続けることができるはずです。もちろん,他者や社会の役に立てるような生き方ができれば,人生はより実り多いものになると思いますが,たとえ他者や社会の役に立てるような生き方ができなかったとしても,他者や社会に害をもたらすような生き方をしない限り,誇りを持って幸せな人生を送り続けることは十分に可能であると思います。(前書き)(1)(3)(4)(6)(10)(11)(17)(19)(14)(21)関連