「無常の中に生きる一つひとつの命のかけがえのなさをみつめること,無常であるからこそ,命の重みをみつめる目をもつこと,これがブッダの無常の教えから学ぶことではないでしょうか。」(『もういちど読む山川倫理 PLUS 人生の風景編』,小寺聡編,山川出版社)
○死なない人間はいません。人間はいつか必ず死にます。しかも,いつ死ぬかは分からず,また,私たちがこの世の中で生きることができるチャンスは,たった一度きりです。たった一度きりのチャンスなのですから,是非とも真に人間らしく実り多い(自分にとってのみならず他者や社会にとっても有益な),生きる喜びや希望に満ちた幸せな人生を送りたいものですし,いつ死んでも悔いが残らないように,一日一日を,一瞬一瞬を掛け替えのないものとして大切にしながら生活したいものです。そのようにして,一日一日を,一瞬一瞬を疎(おろそ)かにすることなく思い残すことのない充実した有益な人生を送ることができるなら,私たちは,いつか訪れる死をも心安らかに迎え入れることができるのではないでしょうか。死を目の前にして大きく取り乱すことなく,この世の中に生まれてこれたことや,これまで生きてこれたことに対する感謝の気持ちを新たにしつつ心静かに自分の人生の幕を閉じることができるのではないでしょうか。(前書き)(8)(14)関連