「私は同胞にたいして怒ることもできず,憎む事もできない。なぜなら私たちは協力するために生まれついたのであって,たとえば両足や,両手や,両眼瞼(りょうがんけん)や上下の歯列の場合と同様である。それゆえに互いに邪魔し合うのは自然に反することである。そして人にたいして腹を立てたり毛嫌いしたりするのはとりもなおさず互いに邪魔し合うことなのである。」(『自省録』,マルクス・アウレーリウス,神谷美恵子訳,岩波書店)
○私たちは,他者の支えや助けがなければ生きていられません。実際,生存に不可欠な衣・食・住のどれ一つを取っても,完全に自給自足できている人などいないはずです。私たちは,他者と支え合い,助け合ってこそ生きていられるのであり,その意味で私たちと他者は一体なのですから,他者を競争相手(敵)と見なして足を引っ張り合ったり,パイを奪い合ったりするような生き方ではなく,他者を協力相手(味方・仲間)と見なして仲良く助け合ったり,生きる喜びや幸せを分かち合ったりするような生き方こそが,人間にとって自然で真っ当な生き方と言えるのではないでしょうか。他者と敵対するということは,同じ人間の右手と左手(右足と左足,右目と左目,上の歯と下の歯)が敵対するようなものです。私たちと他者は同じ人間の右手と左手なのですから,是非とも仲違いすることなく,仲良く手助けし合いながら生きていきたいものです。(11)関連