「よく統治された社会では,人民の最下層にまで普遍的に富裕がよくゆきわたるが,そうした富裕をひきおこすのは,分業の結果として生じる,さまざまな技術による生産物の巨大な増加にほかならない(アダム・スミス)」,「社会の“いたるところで”「分業」が持続的に進むというシステム,それが財の生産をつねに持続的に増大させる近代の経済システムの本質である。」(『人間の未来』,竹田青嗣,筑摩書房)
○私たちは独りでは(孤立無援の状態では)生きていられません。私たちは,直接的なものも間接的なものも含め,数知れぬ他者の支えや助けがあればこそ,生きていられるのです。実際,衣・食・住のどれ一つを取っても,完全に自給自足できている人など,少なくとも現代社会にはいないのではないでしょうか。私たちが暮らしている社会は,人類史上最も豊かで安全で便利な社会と言えますが,このような社会で暮らすことができているのも,私たちが分業という協力体制の下で,自分の役割を分担することによって(自分の役割を果たすことによって)互いに支え合い,助け合っているからこそです。私たちと他者は,持ちつ持たれつの相互依存関係にあり,その意味で私たちと他者は本来一体なのですから,他者を競争相手と見なして足を引っ張り合ったり,パイを奪い合ったりするような生き方ではなく,他者を協力相手と見なして助け合ったり,幸せを分かち合ったりするような生き方をこそ,心がけたいものです。(6)(9)(11)(12)(14)(17)(20)関連