「どんな人間だって独りで生きるもんじゃあない」,「おまえさんは決して一人ぼっちじゃあなかったし,これから先も,一人ぼっちになることなんかあ決してないんだからね」(『さぶ』(『決定版 山本周五郎全集』所収),近代日本文学電子叢書)
○豊かで安全で便利な社会で暮らしていると,私たちはついつい忘れてしまいがちですが,人間は独りでは(孤立無援の状態では)生きていられません。特に,親の愛情に恵まれずに育った人は,自分は誰にも頼らず,これまで自分独りの力で生きてきたし,これからも自分独りの力で生きていくとの思いが強いかも知れませんが,実際には,目に見える直接的なものも目に見えない間接的なものも含め,数知れぬ他者の支えや助けがあればこそ,私たちはこれまで生きてこられたのだし,これからも生きていけるのです。この事実を正しく認識し,しっかりと心に刻み,たとえどのようなことがあろうとも他者に対する感謝の気持ちを忘れることなく,他者と仲良く助け合いながら,幸せを分かち合いながら生きていきたいものです。そもそも,私たちと他者は,持ちつ持たれつの相互依存関係にあり,その意味で一体なのですから,他者を敵と見なして互いに競い合ったり,パイを奪い合ったりするような生き方ではなく,他者を味方・仲間と見なして互いに助け合ったり,幸せを分かち合ったりするような生き方こそが,人間として自然で真っ当な生き方と言えるのではないでしょうか。(11)(14)(17)関連