「60年代からの高度経済成長によって日本はいつのまにか経済大国になってしまった。するとそれまで日本人同士支え合っていた互助精神が希薄になり,熾烈な「パイの奪い合い」が始まります。」,「「優勝劣敗・弱肉強食」というのは「豊かな」社会に固有の現象なんです。」,「社会が豊かになればなるほど,人々は冷淡になり,意地悪になり,非寛容になった。」(『内田樹の生存戦略』,自由国民社)
○豊かで安全で便利な社会で生活していると,ついつい人間は独りでは生きていられないという事実を忘れてしまいがちです。そして,他者を競争相手(敵)と見なして足を引っ張り合ったり,席を奪い合ったり(パイを奪い合ったり)するようになってしまいます。しかし,実際には,私たちは数知れぬ他者の直接的・間接的な支えや助けがあればこそ生きていられるのであり,その意味で私たちと他者は一体なのですから,他者を敵視するのではなく,他者を協力相手(味方・仲間)と見なして助け合ったり,幸せを分かち合ったりするような生き方こそが,人間として自然で真っ当な生き方と言えるのではないでしょうか。勝ち組・負け組などという言葉もありますが,私たちと他者は持ちつ持たれつの相互依存関係にあるわけですから,本来は勝ちも負けもないはずです。世の中をこれ以上不寛容でとげとげしく殺伐とした暮らしにくい(生きづらい)ものにしないためにも,人間は独りでは生きられないという事実を思い出し,心にしっかり刻み付けるとともに,これまでの自分の考え方や生き方や心の持ち方などを根本的に見直す必要があるのではないでしょうか。(1)(3)(4)(6)(11)(14)関連