「菫程(すみれほど)な小さき人に生れたし」(『漱石「こころ」の言葉』,矢島裕紀彦,文藝春秋)
○「出る杭(くい)は打たれる」とも言うように,称賛されたり,脚光を浴びたりすることが多くなればなるほど,誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)されたり,罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせられたりすることも多くなるのが世の常です。心の平安を乱されることなく自分が好きなことに打ち込み,自分の可能性を十分に花開かせるとともに,多少なりとも他者や社会の役に立ち,思い残すことのない充実した有益な人生を送りたいと望むのであれば,なるべく目立たないように慎み深く控え目に生きるのが賢明なのではないでしょうか。私たちは,表舞台で派手に脚光を浴びている有名人に憧れがちですが,この世の中を実際に支えているのは,舞台裏で人知れず黙々と,しかも楽しみながら努力している無名の人たちです。他者からの評価など余りに気にせず(自分が好きなことに打ち込めることは,それ自体が有り難いことであり,幸せなことなのですから,自分が好きなことに打ち込みながら他者からの評価までを期待するのは,ちょっと欲張り過ぎなのではないでしょうか。),自分らしく生きることをこそ大切にしながら,「縁の下の力持ち」,あるいは,「一隅を照らす」存在として,自信と誇りを持って生きていきたいものです。(14)関連