「お金のある時はあるように暮らせばいい。無い時は無いように暮らせばいい。それでいいじゃないか。」(『それでもこの世は悪くなかった』,佐藤愛子,文藝春秋)
○お金がなければ生きていけませんが,私たちは,生きていくためにお金を稼ぐのであり,お金を稼ぐために生きているのではありません。お金を稼ぐことは,あくまでも人生の手段であり,目的ではありません。お金など,生きていくのに最低限必要な程度の額に多少上乗せした程度の額が稼げれば,それで十分なのではないでしょうか。お金に執着し,お金を稼ぐことが人生の目的になってしまえば,私たちはいつしか,自分がいったい何のために生きているのか,自分がいったい何のためにこの世の中に生まれてきたのかということが分からなくなってしまうに違いありません。たった一度きりの人生に大きな悔いを残さないようにするためにも,お金に対する執着など捨て去り,お金を稼ぐことにではなく,より善く,より人間らしく生きることや,たった一度きりの人生を大いに楽しみ,味わい尽くすこと,すなわち,真に人間らしく実り多い(自分にとってのみならず他者や社会にとっても有益な),生きる喜びや希望に満ちた幸せな人生を送ることにこそ,限りある大切な時間やエネルギーを使えるようになりたいものです。そもそも,贅沢(ぜいたく)さえ言わなければ,私たちが生きていくのに必要なお金など,本当は高が知れているのですから。(21)関連