人生の真理というものは,遠い昔に言い尽くされているのではないでしょうか。それが証拠に,賢者と呼ばれる人たちが言っていることは,古今東西ほぼ同じです。また,私たちは,複雑難解なものを意味もなく高級・高尚なものとして重んじがちであるのとは反対に,諺(ことわざ)のような比較的単純で分かりやすいものを低級・低俗なものとして軽んじがちですが,時の試練に耐えて生き残り,現在も多くの人たちが折に触れては口にする諺には多分に真理が含まれているはずですし(多数の人間を短期間騙(だま)すことや,少数の人間を長期間騙し続けることは可能であるが,多数の人間を長期間騙し続けることは不可能である,と言います。),「真理は子供の口から出る」(プラトン)とも言うように,人生の真理というものは,本来単純明快なものなのではないでしょうか。したがって,人生の真理を表現するための言葉も,できる限り簡単で明瞭なものであるべきなのではないでしょうか。もちろん,単純明快(簡単明瞭)なものであるからと言って,それを体得したり,実践したりすることが容易であるとは限りませんし,「医者の不養生」,「坊主の不信心」,「論語読みの論語知らず」などと言われないようにするためにも,人生の真理は「生活の知恵」としてしっかり身に付けられ,日々の生活に役立てられてこそ意味があるのでしょうが。