豊かで安全で便利な社会で暮らしていると,人間は独りでは生きていられないという事実を,ついつい忘れてしまいますが,実際には,目に見える直接的なものも目に見えない間接的なものも含め,数知れぬ他者の支えや助けがあればこそ,私たちはこれまで生きてこられたのだし,これからも生きていけるのです。例えば,生きていくのに欠かすことのできない衣・食・住のどれ一つを取っても,完全に自給自足できている人など,少なくとも現代社会にはいないのではないでしょうか。私たちが,このような豊かで安全で便利な社会で暮らすことができるのも,分業という協力体制の下で各自がそれぞれに自分の役割を分担し,果たしているからこそです。私たちが生きていられるのは他者のお陰であり,私たちは, 他者を信じ,他者を頼らなければ生きていられないのですから,生きるとは他者を信頼することである,といっても過言ではありません。