「だれも,人目につかぬ宝には頭を下げない。(リヒテンベルク)」(『世界ことわざ名言辞典』,モーリス・マルー編,田辺貞之助監修,島津智編訳,講談社)
○私たちは,日頃あまり馴染(なじ)みのない複雑難解なものを意味もなく高級・高尚なものとして重視しがちであるのとは対照的に,常識のような,いつでも身近にあって比較的単純で分かりやすいものを低級・低俗なものとして軽視しがちですが,人生の真理というものは,本来,単純明快なものなのではないでしょうか。また,私たちは,「大きな幸せ(他者が羨むような社会的成功を収めることなど)」ばかりを追い求めがちであり,「小さな幸せ(日常生活におけるささやかな満足に生きる喜びや幸せを感じることなど)」をついつい見過ごしてしまいがちですが,人生に滅多に訪れることのない,しかも,意外に底が浅く,すぐに色褪(いろあ)せてしまいやすい「大きな幸せ」ではなく,人生の至る所に埋もれている(隠されている),しかも,日常生活に深く根差しているがゆえに決して色褪せることのない「小さな幸せ」をこそ,大切にすべきなのではないでしょうか。世の中を支えているのもきっと,表舞台で派手に脚光を浴びている人たちではなく,舞台裏で人知れず黙々と地道に,しかも楽しみながら努力している「縁の下の力持ち」たちであるに違いありません。「人目につかぬ宝(多くの人たちから軽視されやすく,見過ごされやすく,ほとんど注目を集めることのない宝)」の真価に気づけるようになりたいものです。(前書き)(8)(14)(後書き)関連