「じっさい,貧困はなんら悪いものではありません。そんなことは,すべてを破壊する強欲と贅沢によって,狂ってしまった人でもないかぎり,だれにでもわかることです。人間が自分を維持するために必要なものは,じつにわずかです。」(『人生の短さについて他2篇』,セネカ,中澤務訳,光文社)
○経済的な豊かさと心の豊かさは(経済的な貧しさと心の貧しさは),まったく別のことです。経済的に豊かだからといって,心豊かで幸せな人生を送れるとは限りません。むしろ,経済的な豊かさに執着すればするほど,自分の人生に満足することは難しくなり,不平不満ばかりを募らせるがままに,心の豊かさを失い,自分は不幸であるなどと思い込むようになってしまうのが落ちです。それなのになぜ,私たちは,経済的な豊かさを切望し,経済的な貧しさを忌み嫌うのでしょうか。経済的に豊かでなければ幸せにはなれないなどと教え込まれ,それを鵜呑(うの)みにしてしまっているのではないでしょうか。そのような迷信から目を覚まし,経済的な豊かさに対する執着から解放されることによって,自分の人生に満足できるようになり,心豊かで幸せな人生を送れるようになりたいものです。私たちは,自分が今ここでこうして生きていられることの有り難さに気づき,心から感謝できるようにさえなるなら,たとえどれほど質素でつましい人生を送ろうとも,そこに無限とも言える生きる喜びや幸せを見いだせるようになるはずです。(2021年8月2日)(1)(4)(6)(10)(14)(20)関連