「自由な,調和のとれた,何気ない,殊に何気ないといふ事は日常生活で一番望ましい気がしてゐる。(志賀直哉)」(『教養が滲み出る 極上の名言1300』,斎藤茂太監修,日本文芸社)
○「大きな幸せ」が私たちの人生に訪れることはまれですし,たとえ訪れたとしても,「大きな幸せ」は,派手で目立つ割には意外に底が浅く,幸せな気持ちもすぐに色褪(いろあ)せ,しぼんでしまいがちです。他方,「小さな幸せ」は,地味で目立たないだけに,なかなか気づかれにくく,見過ごされてしまいがちですが,私たちの人生の至る所に転がっています。また,「小さな幸せ」は,私たちの日常茶飯事と直結しているだけに意外に底が深く,幸せな気持ちがすぐに色褪せ,しぼんでしまうということもありません。したがって,常に幸せでありたいと願うのであれば,「大きな幸せ」ではなく,「小さな幸せ」をこそ大切にすべきなのではないでしょうか。誰もが羨むような「大きな幸せ」を手に入れることにではなく,誰の人生にも埋もれている無限とも言える「小さな幸せ」に気づけるようになることにこそ大切な時間やエネルギーを使うべきなのではないでしょうか。そのためにも,まずは,普通に生活できることを当たり前と思ったり,普通の平凡な人生を無価値なもの(あるいは,価値の低いもの)と見なしたりすることなく,普通に生活できることの有り難さに深く思いを致し,普通の平凡な人生の価値を再認識することから始める必要があると思います。(2021年3月9日)(1)(4)(6)(7)(8)関連