「老子は人間の欲望を際限なきまでに放置することは,人間に真の幸福をもたらさないばかりか,かえって人間を惨めにし,人間の社会に混乱と無秩序と破滅をもたらすと考える。・・・すなわち,無欲であるか寡欲であることが人間を幸福にし社会の平和を実現する根本の原理である,と老子は考えるのである。」(『老子』,福永光司,朝日新聞社)
○人間の欲望には際限がなく,放置すればどこまでも肥大化してしまいます。そして,欲望が肥大化すればするほど,それを満たすことは難しくなり,不平不満ばかりを募らせる結果になってしまいます。当然のことながら,そのような人たちが増えれば増えるほど,世の中はとげとげしく不寛容で暮らしにくい(生きづらい)場所になっていきます。穏やかで寛容で暮らしやすい(それほど生きづらさが感じられない)世の中を実現しつつ,常に満ち足りた気持ちで人生を送りたいと願うのであれば,自分の欲望の肥大化に意識的にブレーキを掛ける必要があるのではないでしょうか。無欲,あるいは,小欲であることを心がけ,可能な限り無い物ねだりすることなく,自分が持っている物(自分に与えられている物)だけで満足できるようになる必要があるのではないでしょうか。そのためにも,まずは自分が持っている物の豊かさ(物質的な豊かさのみならず,私たちの生命を維持するために備わっている驚異的な生体メカニズムや,私たちの人生を成り立たせてくれている数知れぬ他者による直接的・間接的な支援・協力なども含め)に気づけるようになりたいものです。(2020年10月21日)(3)(4)(6)関連