常に心を込めてマインドフルに今この瞬間を生きられるようになるためには,今この瞬間の掛け替えのなさに気付けるようになることが重要であり,そのためにも,私たちは,人生はたった一度きりであるということや,人間の命は儚(はかな)く人生は短いということや(「命は風前の灯(ともしび)の如(ごと)し」,「光陰矢の如(ごと)し」,「歳月人を待たず」など),この世の中が無常であるということ(「朝に紅顔ありて夕べに白骨となる」,「昨日の花は今日の塵(ちり)」など)などを常に念頭に置きながら生活する必要があるのではないでしょうか。これらの事実を意識から遠ざけてしまえば,今この瞬間を生きられるのは今この瞬間だけであるということが分からなくなってしまい,一日一日を,一瞬一瞬を掛け替えのないものとして大切にしようとする気持ちがどうしても薄れてしまいます。もちろん,これらの事実を気にし過ぎて心ここに在らずという状態になってしまったのでは元も子もありませんので,常に心を込めてマインドフルに今この瞬間を生き,今この瞬間を楽しみ,細部に至るまで丁寧に(「神は細部に宿る」と言います。)今この瞬間を味わい尽くすことにこそ気持ちを集中すべきであるとは思いますが。常に心を込めてマインドフルに今この瞬間を生きられるようになり,自分の人生を十分に生き切れるようになるなら,いつか訪れる死をも,泰然と受け止められるようになるのではないでしょうか。死が訪れた際には,この世の中に生まれてこれたことや,これまで生きてこれたことに対する感謝の気持ちを新たにしつつ,心静かに人生の幕を閉じることができるようになるのではないでしょうか。