「赤シャツ（教頭）がホホホホと笑ったのは，おれの単純なのを笑ったのだ。単純や真率が笑われる世の中じゃ仕様がない。清（きよ）はこんな時に決して笑った事はない。大いに感心して聞いたもんだ。清の方が赤シャツよりよっぽど上等だ。」（『坊ちゃん』（『決定版 夏目漱石全集 近代日本文学電子叢書』所収），千歳出版）
○私たちは，複雑難解なものを高級・高尚なものとして意味もなく重んじがちであるのとは反対に，諺（ことわざ）のような単純明快（簡単明瞭）なものを低級・低俗なものとして軽んじがちですが，「真理は子供の口から出る」（プラトン）などとも言うように，真理というものは本来単純明快なものなのではないでしょうか。人生の真理を体得・実践し，真に人間らしく実り多い（自分にとってのみならず他者や社会にとっても有益な），生きる喜びや希望に満ちた幸せな人生を送れるようになるためにも，表面的な複雑難解さや単純明快さなどに惑わされることなく，真理を真理であると見抜き，見分けられるだけの眼力（見識）を，人生のできる限り早い時期に身に付けたいものです。（12）（後書き）関連
