「この十八世紀人(モオツァルト)の単純な心の深さに比べれば,現代人の心の複雑さは殆(ほとん)ど底が知れているとも言えようか。」(「モオツァルト」(『小林秀雄全作品 15』所収),新潮社)
○私たちは,複雑難解なものを意味もなく高級・高尚なものとして重んじがちであるのに対し,諺(ことわざ)のような単純明快なものを低級・低俗なものとして軽んじがちですが,真理というものは本来,単純明快なものなのではないでしょうか。単純明快なものの中にこそ深い真理は隠されているのであり,複雑難解なものなど,意外に底が知れているのではないでしょうか。真理を体得・実践し,実り多い幸せな人生を送れるようになるためにも,見かけの単純明快さ複雑難解さに惑わされないようにするとともに,真理を真理であると,あるいは,デマをデマであると見抜き,見分けられるだけの眼力(見識)を,学問など(自分の経験から学ぶことや読書することなども含め。)を通じてしっかり養いたいものです。古今東西の賢者がほぼ同じことを言っていることからも分かるように,真理はすでに言い尽くされており,しかも,何一つ隠されることなく常に私たちの目の前に明示(開示)されているのですから。(後書き)関連