「得をしたと思い込んでいる者が,損をしている場合が多い。(マチュラン・レニエ)」(『世界ことわざ名言辞典』,モーリス・マルー編,田辺貞之助監修,島津智編訳,講談社)
○何事にも一長一短があります。したがって,何かを得るということは,何かを失うということに他なりません。私たちが暮らしている社会は,人類史上最も豊かで安全で便利な社会と言えますが,私たちは,このような社会を手に入れるために何を失ったのでしょうか。このような社会で暮らせるということは,本当に有り難いことであり,心から感謝すべきことであると思いますが,社会の進歩・発展や生活水準の向上に伴って失ってしまったものも,きっと少なくないはずです。実際,社会の進歩・発展や生活水準の向上に伴って,私たちの幸福度は本当に高まっているのでしょうか。もし私たちの幸福度が低下しているとしたら,そのような社会の発展・進歩や生活水準の向上には,いったいどのような意味があるのでしょうか。私たちは,自分たちは何を得るために何を失おうとしているのかということについて常に自覚的である必要がありますし,自分たちが失おうとしているものの大きさや掛け替えのなさに気づいた場合には,ためらううことなく迅速かつ柔軟に軌道修正を図り,より善い,より人間らしい生き方や社会の実現を目指すべきであると思います。(4)(6)(9)(11)(21)関連