「梅岩(石田梅岩)は「士農工商」という身分制度を,人間の上下ではなく,職業の別による分業ととらえた。各人がそれぞれ自分の職業や持ち分に満足し(知足安分),おのれの職務に励むことによって,世の中が運営されていく。」(『もういちど読む 山川倫理』,小寺聡編,山川出版社)
○人間は独りでは生きていられません。実際,衣・食・住のどれ一つを取っても,完全に自給自足できている人間など,少なくとも現代社会にはいないのではないでしょうか。私たちは,互いに支え合い,助け合ってこそ生きていられるのであり,このような豊かな社会で暮らせるのも,分業という協力体制の下で,私たちが互いに支え合い,助け合っているからこそです(私たちが,自分が好きなことに打ち込めるのも,その他のことを他者が分担し,負担してくれているからに他なりません。)。私たちは他者の支えや助けがなければ生きていられませんが,他者もまた同様に,私たちの支えや助けがなければ生きていられません。私たちは,互いに支え合い,助け合ってこそ生きていられるのだという事実を正しく認識し,他者に対する感謝の気持ちを忘れることなく(他者を妬んだり,他者を見下したりすることなく),また,自分自身に対する誇りを失うことなく(自分で自分を哀れんだり,卑屈になったりすることなく)生きていきたいものです。(11)(14)(18)関連