実り多い幸せな人生を送るために

真に人間らしく実り多い,生きる喜びや希望に満ちた幸せな人生を送るために

 自戒の念を込め,どのようにすれば真に人間らしく(自分にとってのみならず他者や社会にとっても有益な),生きる喜びや希望に満ちた幸せな人生を送れるのかということについて,あるいは,実り多い幸せな人生を送ることは誰にでも可能であるということについて,様々な名言などをヒントにしつつ(それらに含まれている人生の真理を私なりに理解しつつ),できる限り分かりやすく筋道立てて説明していきたいと思います。皆様が実り多い幸せな人生を送る上において,多少なりともお役に立てれば幸いです。               皆様の人生が,実り多い幸せなものでありますように!

(8)今この瞬間を疎かにすることなく,常に心を込めて今この瞬間を生き,楽しみ,味わい尽くせるようになるということも,幸せであるための重要なポイントである。

 「心ここに在らざれば,視れども見えず,聴けども聞こえず,食えどもその味わいを知らず」とも言うように,過去(記憶)や未来(想像)に心を奪われたり,他者との勝負や世間の評判に気を散らしたり,内面の物足りなさや憂さを紛らわせるために過剰な刺激や興奮やスリルに我を忘れたり,雑事に忙殺されたり,氾濫する雑多な情報に心を惑わされたりして心ここに在らずという状態で生きている人間が,いま自分の目の前にある幸せに気づくことは難しいのではないでしょうか。人生に稀(まれ)に訪れる派手で目立つ「大きな幸せ(他者が羨むような社会的(世俗的)成功を収めることなど)」には気づけたとしても,人生の至る所に埋もれている(隠されている)地味で目立たない「小さな幸せ(ただ普通に呼吸をしたり,歩いたり,景色を眺めたり,誰かと笑顔を交わしたりすることに生きている喜びや幸せを感じることなど)」には,なかなか気づけないのではないでしょうか。

 しかし,私たちは,滅多に訪れることがなく,たとえ訪れたとしても,意外に底は浅く,すぐに色褪(いろあ)せてしまいがちな「大きな幸せ」より,日常生活に深く根差しているがゆえに決して色褪せることのない「小さな幸せ」をこそ,大切にすべきなのではないでしょうか。そして,人生の至る所に埋もれている無限とも言える「小さな幸せ」に気づけるようになり,ひいては,生きていることそれ自体に幸せを感じられるようになるためにも,様々な執着や雑念などから解放され,心静かにゆったりと,自分が今ここでこうして生きていられることの有り難さに深く思いを致し,心から感謝しつつ,常に心を込めて今この瞬間を生き,楽しみ,細部に至るまで(「神は細部に宿る」と言います。)丁寧に味わい尽くせるようになる必要があるのではないでしょうか。そして,今この瞬間を疎かにすることなく,掛け替えのないものとして大切にできるようになるためにも,世の中が無常であることや(世の中は常に変化しており,今この瞬間を生き,楽しみ,味わうことができるのは,今この瞬間のみです。世の中が常に変化しているということは,ある意味では,一つの救い,一つの希望でもありますが。),人生が短く(「光陰矢の如(ごと)し」,「歳月人を待たず」),命が儚(はかな)いものであることを常に念頭に置きながら生活する必要があるのではないでしょうか(とは言え,世の中が無常であることを嘆き悲しんだり,死を無闇に恐れてじたばたしたりする必要はなく,生きている間は悔いが残らないように人生を大いに楽しみ,味わい尽くし,死が訪れた際には,それを泰然自若と受け止め,この世の中に生まれてこれたことや,これまで生きてこれたことに対する感謝の気持ちを新たにしつつ,静かに人生の幕を閉じればいいだけのことであるとは思いますが。)。

 また,心の目を曇らせたり,心の平安を失ったりしないようにするためにも,呼吸や歩行や飲食などの行動のみならず,欲望や感情や思考なども含め,今この瞬間に自分が体験していることに対して常に心を開き,関心を払い,自覚的でありたいものです。あるがままの自分を注意深く観察したり,自分の心の声にじっと耳を傾けたり,自分の欲望や感情や思考などの本源(本質)を見極めようと努力したりすることを通じてこそ,私たちは自分というものを,ひいては,人間というものを深く知ることができるのですし,自分の欲望や感情や思考などから適度に距離を置き,それらをある程度は自分の意志によってコントロールすることができるようになることで,それらに振り回されることなく,どのような状況においても心の目を曇らせることなく,心の平安を保つことが可能になると思うからです。

 私たちは今この瞬間にしか生きることができないのであり,幸せであるというのは今この瞬間が幸せであるということなのですから(そして,今この瞬間の幸せが継続することによって,自(おの)ずと幸せな未来が切り開かれていくということなのですから),人生を長い目で見ながらも,常にマインドフルであることを心がけつつ,今この瞬間を決して疎(おろそ)かにしない,ということも,幸せであるための重要なポイントと言えるのではないでしょうか。もちろん,過去の反省を踏まえて,あるいは,将来を見越して現在やるべきことに最善を尽くすということは大切なことですが,後悔や取り越し苦労ばかりして心ここに在らずという状態に陥り,現在やるべきことに手に付かなくなってしまうというのでは,本末転倒と言わざるを得ません。