「自然の要求にはおのずからなる限界がある。喉が渇けば水を飲むが,一定の量以上に飲むことはない。だが人間の欲望には限りがなく,物でも金でも持つが上に持とうとし,自然の限度を飛びこえて果てしがない。」(『ローマの哲人 セネカの言葉』,中野孝次,岩波書店)
○人間の欲望は,必ずしも本能に基づくものではないだけに,限りがなく,放って置けばどこまでの肥大化していきます。実際,例えば,喉の渇きは水を飲むことによって簡単に癒されますが,金銭欲や物欲などは,とどまる所を知らず,たとえどれだけ多くの金銭や物を手に入れたところで,満ち足りるということがありません。しかし,「起きて半畳寝て一畳」とも言うように,贅沢(ぜいたく)さえ言わなければ,私たちが生きていくのに必要な金銭や物など,本当は高が知れているのではないでしょうか。必要以上を望めば切りがなく,欲張り続ける限り,私たちは,死ぬ瞬間まで,常に不満を抱えたまま自分の欲望に追い立てられ,振り回され続けることになってしまいます。自分の欲望の奴隷であることから解放されるためにも,必要以上に欲張ることをやめ,たとえそれが必要最小限の金銭や物であったとしても,自分が持っている(自分に与えられている)金銭や物だけで満足できるようになりたいものです。(4)(6)(20)関連