「金銭が君臨するところではどこでも,すべての人によるすべての人のペテンがあるばかりです。人はもはや何物をも,誰をも信用することができず,もはや価値のあるものは何一つ手に入れることができません。」,「人間の有する最も貴重なものは概して人間がただでもらったものなのです。」(『簡素な生活』,シャルル・ヴァグネル,大塚幸男訳・祖田修監修,講談社)
○私たちが生きていくのに,お金は必要不可欠な物ですが,お金はあくまでも人生の手段なのであり,人生の目的ではありません。生きていくのに必要なだけのお金があればいいのであり,それ以上のお金を手に入れることに,いったいどのような意味があるのでしょうか。お金に執着し,拝金主義に染まってしまえば,お金を手に入れることが人生の主たる目的になってしまい,物事の価値をお金(金銭的な価値)でしか評価できなくなってしまいます。当然のことながら,普通のつましい暮らしに生きる喜びや幸せを感じたり,生きていることそれ自体に価値を見いだしたりすることも難しくなってしまいます。しかし,実際には,お金では買えない物こそが,本当に価値のある大切な物なのではないでしょうか。私たちの命,その命を守り,私たちが生きることを可能にしてくれている人体や自然や宇宙の神秘的とさえ言える精妙な仕組みや働き,私たちの人生を成り立たせてくれている数知れぬ他者の直接的・間接的な支えや助けなどなど。これらは,決してお金で買うことはできません(お金さえ出せば買えるという物ではありません。)。心の目を曇らせ,本当に価値のある大切な物を見失ってしまわないようにするためにも,金の亡者になってしまわないように,くれぐれも留意したいものです。(20)関連