「感謝をすることだけが,すでに「飽きている」ものを「ありがたい」と思いなおし,新鮮な気持ちで日常を見なおさせてくれる。」(『ぼくたちに,もうモノは必要ない。増補版』,佐々木典士,筑摩書房)
○人間の欲望には切りがなく,どれだけ恵まれた状況にもすぐに慣れ,そのような状況を当たり前と思い,飽き足りなく感じてしまいがちです。それでは,状況がいくら好転しようとも,束(つか)の間の満足しか得られず,常に満ち足りた気持ちで生活することなど不可能です。満ち足りた幸せな人生を送りたいと願うのであれば,自分が今ここでこうして生きていられること(より具体的には,驚くほど豊かで安全で便利な社会において,数知れぬ他者の支えや助けを得ながら,神秘的かつ奇跡的とさえ言える人体の精妙な仕組みや働きのお陰で生きていられること)を当たり前と思うことがないよう,その有り難さに常に深く思いを致し,心から感謝する習慣を身に付ける必要があるのではないでしょうか。自分が今ここでこうして生きていられることの有り難さに常に深く思いを致し,心から感謝できるようになるなら,欲望の肥大化には自然にブレーキが掛かるでしょうし,やがては,生きていることそれ自体に幸せを感じられるようになり,どのような状況に置かれようとも,幸せであり続けることが可能になるのではないでしょうか。(2021年2月25日)(2)(4)(6)(7)関連