「リーダを自覚できない人間が権力者であった場合にのみ,権力は悪に変わる。」(『日本人へ 危機からの脱出篇』塩野七生,文藝春秋)
◯世の中の規律や秩序を維持するためには,権力というものが欠かせません。しかし,権力は,あくまでも私たちが住みやすい安全で安心な世の中を築き上げ,維持するためのものであり,権力を有する者自身の欲望を満たすためのものではありません。権力者が,その権力を自分の欲望を満たすために乱用するなら,世の中の規律や秩序は乱れ,世の中はどんどん危険で不安に満ちた住みにくい場所になってしまいます。また,そのような権力者自身も,権力の虜(とりこ)になって心の目を曇らせることにより,本当に大切なものが分からなくなってしまい,自分が今ここでこうして生きていられることの有り難さに対する感謝の気持ちを忘れるとともに,いま自分の目の前にある幸せに気づくことさえできなくなってしまうのではないでしょうか。そして,内面の満たされなさを埋め合わせるべく,ますます権力を追い求めるようになり,そのような悪循環から抜け出せなくなってしまうのではないでしょうか。(2020年6月30日)(4)関連