「けわしい丘に登るためには,さいしょはゆっくり歩くことが必要である。(シェークスピア)」(『心をささえる一言』,河盛好蔵,青春出版社)
○効率が重視される社会においては,何よりも「早さ」が求められます。頭の回転の早さや物事を処理する早さが競われ,早ければ早いほど高い評価が得られます。一定時間内にどれだけ多くの問題を解くことができるか,一定時間内にどれだけ多くの仕事をこなすことができるかということで,入学できる学校も,入社できる会社も,ほぼ決まってしまいます。しかし,実際の生活においては,物事を早く処理できることより,物事に粘り強く取り組み続けられることの方が,よほど重要なのではないでしょうか。実際,何事であっても,長年にわたって怠ることなく努力し続けられればこそ,才能の有無にかかわらずそれなりに上達もし,それに見合った成果も得られ,また,人間的に成長(成熟)・向上することもできるのではないでしょうか。「早い者に上手(じょうず)なし」,「急(せ)いては事を仕損じる」,「駆け出す者は転ぶ」,「ゆっくり行く者は着実に進み,着実に進む者は遠くまで行く」などとも言います。物事を早く処理できる人間だけでなく,物事に粘り強く取り組み続けることのできる人間もきちんと評価される社会になってもらいたいものです。なお,読書においても,読書を通じて学んだ知識を「生活の知恵」としてしっかり身に付け,実生活において生かせるようになるためにも,効率重視の速読ではなく,熟読・精読を心掛け,読書の途中で立ち止まってじっくり考えたり,じっくり味わったりする時間をこそ大切にしたいものです。(12)関連