「メディア研究者も,各種の記事の統計をとったり,あるいは編集者に記事のリストを見せ,彼らがどれを選んでどう表示させるかを見ることによって,記事の選定者が一貫してポジティブな記事よりネガティブな記事を優先することを確認している。」(『21世紀の啓蒙(上)』,スティーブン・ピンカー,橘明美・坂田雪子訳,草思社)
○そもそも生き物には,危険を回避して生き延びるべく,自分の生存を脅かすような出来事や情報に注意や関心を向けやすく,記憶にとどめやすい傾向がありますが,災害や事故や事件などのネガティブな出来事や情報を中心に報道する各種メディアの影響もあり,私たち人間も世の中の否定的な側面ばかりに目を向けてしまいがちです。しかし,世の中に否定的な側面があるのは事実ですが,肯定的な側面があるのも事実です。世の中の肯定的な側面には目を向けようとせず,否定的な側面ばかりに目を向けるのは,余りにも偏った不公平なものの見方と言えるのではないでしょうか。私たちは,放って置けば世の中の否定的な側面ばかりに目を向けてしまいがちなのですから,世の中の肯定的な側面にこそ意識的かつ積極的に目を向ける習慣を身に付ける必要があるのではないでしょうか。世の中を肯定できればこそ,私たちは,この世の中で生きてることや,この世の中に生まれてきたことに感謝したり,幸せを感じたりすることができるのであり,世の中を肯定できるということは,私たちが幸せな人生を送るための必須条件なのですから。(9)関連