「憂る者は富貴にして愁,楽む者は貧にして楽しむ。(井原西鶴)」(『365日 一日一言』,齋藤孝,世界文化社)
○最近の風潮では,金持ちは「勝ち組」,貧乏人は「負け組」と見なされがちですが,必ずしも金持ちが幸せであるとは限りませんし,貧乏人が不幸であるとも限りません。不幸な金持ちはいくらでもいますし,幸せな貧乏人もいくらでもいます。お金をたくさん持っていることと幸せであることは,まったく別のことです。たとえどれだけ質素な暮らしをしていても,本人が自分は幸せであると心の底から思えるなら,その人は確かに幸せなのですし,たとえどれだけ贅沢(ぜいたく)な暮らしをしていても,本人が自分は幸せであると心の底から思えないなら,その人は確かに幸せではないのですから,人間の幸不幸を最終的に決めるのは,持っているお金の多寡ではなく,物事の受け止め方や心の持ち方ということになります。そのように考えるなら,どのような暮らしをしていても自分は幸せであると心の底から思える人間こそが真の「勝ち組」と言えるのではないでしょうか。真の「勝ち組」になるためにも(幸せな人生を送れるようになるためにも),たくさんのお金を手に入れることにではなく,どのような暮らしをしていても幸せになり,幸せであり続けれるように自分の物事の受け止め方や心の持ち方を変えることにこそ,関心を払い,力を注ぎたいものです。自分が今ここでこうして生きていられることの有り難さに常に深く思いを致し,心から感謝する習慣を身に付けるなどして「生きてるだけで丸儲(まるもう)け」(さんま)と心の底から思えるようになるなら,私たちはきっと,たとえどのような貧乏暮らしをしていても,幸せになり,幸せであり続けることが可能になるはずです。(4)(6)(7)(14)(21)関連