「この(幕末の日本の)国土のゆたかさを見,いたるとこに満ちている子供たちの愉しい笑声を聞き,そしてどこにも悲惨なものを見いだすことができなかった私には,おお,神よ,この幸福な情景がいまや終わりを迎えようとしており,西洋の人々が彼らの重大な悪徳をもちこもうとしてるように思われてならないのである。(ヘンリー・ヒュースケン)」(『世界が憧れた日本人の生き方』,天野瀬捺,ディスカヴァー・トゥエンティワン)
○私たちが暮らしている社会は,物質的には人類史上最も豊かな社会と言えますが,社会が豊かになったことで私たちの幸福度は本当に上がっているのでしょうか。むしろ,下がっているのではないでしょうか。社会が豊かになったことで私たちの幸福度が下がっているとしたら,すなわち,社会が豊かになったことで得るものより失うものの方が大きいとしたら,現在の延長線上にさらに豊かな社会を実現することに,あるいは,現在の豊かさを維持し続けることに,いったいどのような意味があるのでしょうか。私たちはそろそろ,物質的な豊かさをある程度は犠牲にしてでも,心の豊かさを追い求める方向に(私たちの幸福度を上げる方向に)大きく舵(かじ)を切る必要があるのではないでしょうか。物質的な豊かさ(贅沢(ぜいたく)な暮らし)ではなく,心の豊かさ(質素であっても幸せな暮らし)を手に入れることにこそ,関心を払い,力を注げるようになる必要があるのではないでしょうか。(4)(6)(21)関連