「妬みは,「いじめ」の原動力である。(土居健郎)」(『看護のための精神医学 第2版』,中井久夫・山口直彦,医学書院)
○自分は不幸であると思い込んでいる人間は,他者の幸せを妬みがちであり(他者の不幸を願い,喜びがちであり),幸せそうに見える他者を自分と同じような不幸な状況に巻き込もうとしがちです。したがって,自分は不幸であると思い込んでいる人間が増えれば増えるほど,世の中は悪意に満ちた殺伐としたものになっていきます。したがって,そのような世の中で暮らしたくない,もっと善意に満ちた温かみや潤いのある世の中で暮らしたいと思うのであれば,自分は不幸であると思い込んでいる人間を少しでも減らすということが,少なくとも,これ以上増やさないということが重要になってきます。他者と競い合って社会的(世俗的)な成功を収め,財産や地位や権力や名声などを手に入れなければ幸せになれないなどといったデマが世の中に蔓延(まんえん)している限り,自分は不幸であると思い込んでしまう人間は今後も増える一方と考えられます(なぜなら,実際には社会的な成功を収めたからと言って幸せな人生が約束されるわけではありませし,そもそも,社会的な成功を収めることのできる人間など,特別な才能や幸運に恵まれたごく少数に限られているからです。)。世の中をこれ以上暮らしにくいものにしないためにも,まずは,私たち一人一人が,そのようなデマを鵜呑(うの)みにしたり,そのようなデマに踊らされたりしないようにする必要があるのではないでしょうか。(1)(3)(10)(14)(20)関連