「(房江の将来の夢は)その日を何とか不自由なく暮らせていけて,夫や自分が健康で,伸仁(一人息子)が無事に成長してくれることだけだった。」(『流転の海 第一部』,宮本輝,新潮社)
○望むことが少ければ少ないほど,その望みが叶(かな)えられる可能性は高くなります。不平不満ばかりを募らせては,自分は不幸であるなどと思い込むようになってしまう危険性は低くなり,常に満ち足りた気持ちで幸せな人生を送れる可能性は高くなります。したがって,幸せな人生を送りたいと思うのであれば,まずは自分の欲望に自分の意志でブレーキを掛けられるようになる必要があるのではないでしょうか。必要以上に欲張ることをやめ,自分をできる限り無欲・小欲の状態に近づける必要があるのではないでしょうか。自分が今ここでこうして生きていられることを当たり前と思うことなく,その有り難さに深く思いを致し,心から感謝できるようになるなら,私たちはきっと,生きていることそれ自体に幸せを感じられるようになり(「生きてるだけで丸儲(まるもう)け」(さんま)と心の底から思えるようになり),必要以上に欲張ることが恥ずかしくなるはずです。もちろん,必要以上に欲張ることをやめ,幸せな人生を送れるようになったからといって,それで人間的な成長(成熟)や向上が止まってしまうわけではありません。実際,常に満ち足りた気持ちで幸せな人生を送りながらも,謙虚さや向上心を失うことなく,何歳になっても自分が信じる目標や理想に向かって自分が進むべき道を前進し続ける人はいくらでもいます。(4)(6)(14)(21)関連