「自慢する人間は賢明な人間のあざけりの的,愚かな者の感嘆の的,取り巻きどもの偶像,自分自身の高言の奴隷である。」(『ベーコン随想集』,神吉三郎訳,岩波書店)
○人間は自惚(うぬぼ)れやすい生き物であり,自分を実際以上に見積もっては慢心してしまいがちです。しかし,慢心し,自分は無知であり未熟であるという自覚を失ってしまえば,謙虚に学び,努力する姿勢や,素直に反省する態度なども失い,そこで人間的な成長(成熟)や向上は止まってしまいます。そして,独善に陥るとともに,あとは退歩・退行し,堕落するだけになってしまいます。謙虚さを失い,自己顕示的に振る舞う人は,一時的には,あるいは,一部の人間からは称賛されたり,偶像視されたりすることもあるかも知れませんが,そのような状況は決して長続きしませんし,大多数の人間から支持されるということも滅多にありません。自分を人間的に成長・向上させ続けることによって,自分の可能性を十分に花開かせ,実を結ばせるとともに,多少なりとも他者や社会の役に立ちたい,他者や社会に益をもたらしたいと望むのであれば,決して慢心してしまわないように,人間は自惚れやすく,自分を実際以上に見積もってしまいがちな生き物であるという自覚だけは,常に持っていたいものです。(11)(12)関連