「どのように自給自営の生活をしようとしても,自給だけでは間にあわず,交易に頼らざるをえない」(『生きていく民俗』,宮本常一,河出書房)
○豊かで安全で便利な社会で暮らしていると,ついつい忘れてしまいがちですが,私たちは独りでは(孤立無援の状態では)生きていられません。直接的なものも間接的なものも含め,数知れぬ他者の支えや助けがあればこそ,私たちは生きていられるのです。実際,衣・食・住のどれ一つを取っても,自給自足できている人などいないのではないでしょうか。さらに言えば,私たちが何か自分が好きなことに打ち込めるのも,その他のことを他者が分担し,負担してくれているお陰と言えます。私たちと他者は,互いに支え合い,助け合わなければ生きていられず,その意味で,私たちと他者は一体なのですから(持ちつ持たれつの相互依存関係にあるのですから),他者を競争相手(敵)と見なして,足を引っ張り合ったり,パイを奪い合ったりするような生き方ではなく,他者を協力相手(味方・仲間)と見なして,助け合ったり,幸せを分かち合ったりするような生き方こそが,人間として自然で真っ当な生き方と言えるのではないでしょうか。(11)(14)(17)(19)(20)関連