「建物の全体をささえているのは地中にかくれている石である」(『簡素な生活』,シャルル・ヴァグネル,大塚幸男訳・祖田修監修,講談社)
○褒められれば嬉(うれ)しくなり,貶(けな)されれば悲しくなるのが人情ですし,特に日本人は,他者からの評価や世間の評判に過敏な国民であると言われています。しかし,「出る杭(くい)は打たれる」,「大木は風に折られる」などとも言うように,褒められることが多くなれば貶されることも多くなるのが,この世の常です。そもそも,他者からの評価や世間の評判など,そのほとんどが,ちょっとしたことですぐに手のひら返しに変わってしまうような無責任でいい加減なものなのですから,毀誉褒貶(きよほうへん)に一喜一憂することほど馬鹿らしいことはないのではないでしょうか。他者からの評価や世間の評判など余り気にせず,また,できる限り目立たないようにしながら,自分が信じる目標や理想に向かって,あるいは,より善い,より人間らしい生き方を目指して,自分が進むべき道を自分の歩幅で一歩ずつ前進し続けるような生き方こそが,最も賢明な生き方と言えるのではないでしょうか。社会というものはきっと,表舞台で脚光を浴びているような人たちによってではなく,そのように舞台裏で日夜人知れず黙々と努力している人たちによってこそ支えられているのだと思います。(14)関連