「ないものをどこまでも欲しがるという心のくせは,あるものにけっして満足しない,ということと同じである。」(『ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門』,ウィリアム・ハート,太田陽太郎訳,春秋社)
○どのような恵まれた境遇にもすぐに慣れてしまうことからも分かるように,人間の欲望には際限がなく,放って置けば肥大化する一方になりがちです。したがって,自分の欲望に意識的にブレーキを掛けない限り,人間が満ち足りるということはありません。どれだけ多くの物を持っていても,欲を張り,無い物ねだりをし続ける限り,人間はいつまでたっても満足することができません。常に満ち足りた気持ちで幸せな人生を送りたいと願うのであれば,足るを知り,自分の欲望を適度に抑えられるようになる必要があるのではないでしょうか。自分がすでに持っている物の多さ(私たちが生活している社会の驚異的な豊かさ,私たちの生活を成り立たせてくれている数知れぬ他者の直接的・間接的な支えや助け,私たちの命を守り,私たちが生活することを可能にしてくれている人体の神秘的とさえ言える精妙な仕組みや働きなど)に気づき,自分が持っている必要最小限の物だけで満足できるようになる必要があるのではないでしょうか。(2020年11月19日)(4)(6)関連